臍ヘルニア
お腹の壁を形成する腹直筋や腹直筋筋膜という筋肉や筋膜が形成される過程で、臍輪部分での筋膜の形成が一時的に不十分となり、筋膜部分に欠損が生じることがあります。すると、筋膜の欠損孔(A)より腹腔内臓器(腸管 大網:たいもう など)が腹腔外へ脱出して臍部分の隆起が生じます。これが臍ヘルニア(でべそ)の発生メカニズムです。
(正常)
(臍ヘルニア)
(臍ヘルニア後の臍部の痕跡)
泣いたりしてお腹に力が加わると、臍部より皮膚が外にとび出て臍ヘルニアは目立ちますが、安静時にはこの膨隆は改善または消失します。
多くは生後1~2ヵ月位に欠損孔(A)の大きさは最大になり、以後縮小し大半は生後6ヵ月までに筋膜の欠損部(A)は閉鎖し、臍部の膨隆は認めなくなります。しかし、この欠損孔(A)が自然閉鎖をしていても、皮膚の伸展の度合いが大きければ、臍部分は余剰の皮膚で覆われ(B)美容的な問題が生じることがあります。
[臍ヘルニアの圧迫法]
臍部の膨隆部分(デベソ部分)を早期から圧迫をしていると、無圧迫例に比べ早期に臍ヘルニアは改善・消失することは、1994-1996年頃の香川小児病院との合同研究で証明されました。したがって、この時期以降は当科でも積極的に臍ヘルニアに対しては圧迫療法を推進しています。圧迫法のポイントは以下のようなものです。
- 治療上の注意点
- 1 圧迫法が有効なのは生後6ヶ月頃まで
- 2 皮膚がかぶれれば テープによる圧迫は控える
- テープの使用を数日控えると皮膚は正常に戻るので、 皮膚が正常になったら再度圧迫法を続けます
- 3 かぶれを起こさないテープは一人ひとりで異なるので 、患児に合ったテープを使用 してください
- 圧迫するものは、綿球やスポンジなど、自宅にあるも のや薬局で手に入るものを使用します
- 4 圧迫は確実に行ってください
- 不十分な圧迫(泣くと臍ヘルニアが出てくる場合)は治療効果が乏しいようです。
圧迫法のあれこれ
スポンジによる圧迫
綿球による圧迫
ビニールテープは意外にかぶれにくいようです
- <<新生児のお臍>>
-
もし、生後1月前後で臍ヘルニアになったとしても、まずは様子を見てください
しかし、次第に目立ち始めたら圧迫法を考えてみてください
改善傾向が少ない場合は 圧迫法の手技の再チェックを考えてください -
生後半年以上が経っても、どうしても治らない場合は、圧迫による方法は無理だと思います 。
治らない場合でも外科的な治療法は可能です。お近くの専門施設へご相談ください。