胆道閉鎖症
肝臓で作られた胆汁の通り道である胆管が、出生前からもしくは、出生後早期に閉塞を起こして胆汁の排泄障害を生じる疾患です。
放置すると、肝臓内に胆汁が滞り、肝臓の組織が破壊され肝硬変を生じてしまいます。発生頻度はわが国では、1万出生に1人とされ、男女比は1:2です。疾患の原因は胆管形成過程での炎症説、ウイルス感染説など諸説ありますが、いまだに解明されていません。出生直後からもしくは徐々に便が白っぽくなり、黄疸が続きます。診察で肝の腫大を認めることもあり、肝硬変が進行すると固く辺縁の丸みを帯びた肝を触知します。黄疸が続き、便が白っぽい場合は専門施設での精査が必要です。母乳栄養の場合は便が薄いレモン色を呈する場合もあるので注意が必要です。
病型は胆管の閉塞部位、閉塞形態により細かく分類されていますが、大まかには吻合不能型(90%以上)と吻合可能型に大別されます。
- 診 断
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黄疸が遷延し、便が白っぽいことから疑われ、血液検査で直接ビリルビンが高いことで精査が必要となります。同様の症状を呈しうる疾患としては新生児肝炎、ウイルス感染症、α-1アンチトリプシン欠損症、Alagille症候群などが挙げられますが、それらの手術の必要のない疾患との鑑別がポイントとなります。
必要な検査には、1.血液検査、2.胆汁の排泄を同定する検査、3.胆道系の形態を見る画像検査、があります。 - ⅰ)血液検査
- 血液検査では直接ビリルビン、肝胆道系酵素の上昇を認めます。検査値を基にしたスコアで胆道閉鎖の判定をする千葉のスコアは参考にはなります。
検査値 | スコア | 検査値 | スコア | 検査値 | スコア |
αグロブリン(%) | TTT | リン脂質(mg/dl) | |||
~10 | -3 | 5~10 | 1 | 300~350 | 1 |
10~19 | 1 | 10~ | 3 | 350~ | 2 |
19~ | 3 | ZTT | 便シュミット反応 | ||
γグロブリン(%) | 8~12 | 2 | (-)または(±) | 1 | |
18~ | -2 | 12~ | 3 | (+) | -1 |
10~18 | 1 | 生後4週以後の黄疸 | -3 | 新生児期の便色 | |
5~10 | 2 | GOT | 灰色 | 2 | |
~5 | 3 | 400~ | -2 | 薄い黄色 | 1 |
総ビリルビン(mg/dl) | GPT | 褐色 | -1 | ||
~5 | -3 | 400~ | -2 | ||
5~8 | -2 | ALP | |||
直接ビリルビン(mg/dl) | ~10 | -2 | |||
~5 | -2 | 10~30 | 0 | ||
5~8 | 0 | 30~80 | 1 | ||
8~ | 2 | 80~ | 2 |
判定 合計点 | +5点以上 0-4点 -1以下 |
胆道閉鎖症の可能性高い 胆道閉鎖症の疑いあり 新生児肝炎を疑う |
- ⅱ)胆汁の排泄を同定する検査
- ・便中胆汁の吸光度検査
- 便への胆汁排せつの有無を近赤外分光法という方法で判定します。
- ・十二指腸液検査
- 十二指腸まで入れたチューブより液を採取し、胆汁の排泄の有無をみる検査です。胆汁排せつがあれば胆道閉鎖は否定できます。
- ・胆道シンチグラフィ
- 放射性物質99mTcを用い、胆汁中に排泄された元素が、腸管内まで通過するかどうかを見る検査です。腸管内に排泄されれば胆道閉鎖は否定できますが、他疾患でも腸管まで排泄されない場合がありますので排泄がなくても胆道閉鎖と診断できる訳ではありません。
- ⅲ)胆道系の形態をみる画像検査
- ・超音波検査
- 胆嚢の大きさ、形、収縮の有無をみます。門脈の腹側の索状となった胆管を同定できることもあります。
さまざまな検査を行っても診断がつかない場合、試験開腹手術を行い、直接胆道系を造影し、さらに肝臓の状況を肉眼で見る必要があります。
- 治 療
- 肝外の胆管が索状となり閉鎖している吻合不能タイプがほとんどなのですが、その索状物をすべて取り除き、胆管があるはずの肝門部に腸管を直接吻合する肝門部腸吻合をまずは施行いたします。この手術は生後早期(2か月までに施行されたほうが、予後が良いとされています。減黄率(黄疸消失の割合)はおおよそ7割です。
新生児期より黄疸が持続し、クリーム色の便が出ている場合、あるいは尿の黄色さが目立つ時には早めの医療機関への受診をお勧めします。