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2015年4月10日

小児の悪性腫瘍

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お花見の時期ももう過ぎつつあるのにここ数日寒いですね。写真は岡山市を北から一望できる半田山植物園です。先週末に子供を連れて行ってきました。天気はあまりよくなかったのですが、散っていく桜がきれいでした。今日はあまり一般的には知られていない子供の悪性腫瘍(がん)の情報です。 子供の悪性腫瘍には白血病のような血液腫瘍以外にも、体の中のさまざまな場所にできる固形腫瘍(かたまり)があります。もともと子供には悪性腫瘍はほとんどできないので、特にお腹の中の腫瘍は進行して大きくなるまで気付かれません。代表的な子供の固形腫瘍には神経芽腫、腎悪性腫瘍、肝悪性腫瘍があります。いずれの腫瘍も手術、化学療法(がん細胞を攻撃する抗がん剤を用いた治療)、放射線療法を組み合わせて治療を行います。以下に3つの腫瘍の特徴を書いておきます。
神経芽腫
副腎や、交感神経節と呼ばれる組織に発生する腫瘍です。交感神経節は広範囲に存在しますので、腫瘍は腹部以外にも頚部、胸部、骨盤からも発生します。5歳以下でできることがほとんどで、発見時の症状には腹部膨満、発熱、顔色不良、四肢痛などがあります。治療は重症度に応じて手術、化学療法、放射線療法を組み合わせて行います。2000年~2014年の期間に岡山医療センターで手術等何らかの治療を行った患者様は31例で、高リスク群(重症度高く治りにくい)の患者様は8例中3例が生存中。中間リスク、低リスク群(重症度低い)の患者様は23例中全例生存しております。高リスク群の治療成績の向上が今後の課題です。高リスク群は非常に強い治療に加えて、最終的には骨髄移植や臍帯血移植、または免疫療法(いずれも当科では行っていないため他院紹介となります)などを行っていく必要がある患者様もいらっしゃいます。
腎悪性腫瘍
腎臓に発生する腫瘍で腎芽腫、腎明細胞肉腫、腎横紋筋肉腫様腫瘍があります。国内では年間80~100例が発生しているといわれています。5歳までに90 %が発症します。おなかに腫瘤を触れることが最も一般的な症状で、その他腹痛や血尿(尿が赤い)を認めることがあります。治療は、手術を行った後に必要に応じて化学療法、放射線療法を追加します。1990年~2014年の期間に岡山医療センターで治療した腎悪性腫瘍は、腎芽腫19例、腎明細胞肉腫3例、腎悪性横紋筋肉腫様腫瘍3例でした。腎芽腫は19例中17例が生存、腎明細胞肉腫は3例中全例生存、腎悪性横紋筋肉腫様腫瘍は悪性度が高く予後が悪いのですが3例中1例が長期生存しております。腎腫瘍の中では腎悪性横紋筋肉腫様腫瘍の治療が今後の課題です。
肝腫瘍
小児の肝臓にできる腫瘍で最も多いのは肝芽腫です。国内では年間40例程度が発生しているとされております。おなかに腫瘤を触れることで発見されます。治療で最も重要なことは手術により腫瘍を完全に切除してしまうことです。発見時に非常に大きくて切除困難な場合は化学療法を行い、腫瘍を小さくしてから切除します。当科で2000年~2014年の期間に治療した患者様は7例中6例が生存しております。
先日別の病気で手術をされたお子さんのお父さんが、「肝芽腫の治療をここで受けた。青山先生にあいさつしたい。」、とおっしゃって、名誉院長の青山先生と再会しておりました。そういううれしい再会ができるように日々頑張っていきたいと思います。   中原でした。

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