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2014年6月10日
急性虫垂炎の診断および治療
急性虫垂炎。昔は「もうちょう(盲腸)」とかよく言われていました。
もうちょうになったから手術を受けて、大きい傷がおなかの右下にあります・・・ていうのは過去の話ですが、最近の虫垂炎の診断および治療について書きたいと思います。
虫垂という場所に炎症を起こすので虫垂炎ですが、正常の虫垂はミミズのような形をしており、小腸から大腸に移行する右の下腹に存在します。
虫垂炎になると虫垂が腫れてきて、直径で6mmを超えてきます。これが虫垂炎です。
炎症が起こるため発熱を感じ、虫垂周辺に痛みが生じます。虫垂はおなかの右下にあるのですが痛み初めはへその周りが痛くなることが多く、炎症の進行と共におなかの右下に向かって痛みが動いていきます。
ほうっておくと虫垂が破裂し、中から膿がでて急性腹膜炎という状態となり、おなか全体が痛くなります。さらに放置すると全身にばい菌が周り、昔なら死んでいたと思います。もちろん今は医学が発展していますので、破裂することはあれど死ぬようなことはありませんよ。
診断方法は一般的にCTをとることが多いです。しかしそれは大人の話。こどもの場合はほとんどはエコーで診断できます。
写真の真ん中に黒く抜けた構造物を確認できますね。あれがエコーで見た虫垂です。普通の大きさよりはるかに大きく、黒く抜けている部分が虫垂の中身となっています。あの中に膿がたまっているんですね。
エコーは脂肪や空気が多いと少し画像が悪くなるので、体格の良い方には不向きな検査ですが、こどもではほとんどの場合エコーで診断できます。
当科では95%以上はエコーで診断しています。CTだと被爆の問題もあるので、なるべく避けています(診断できないとき、病気がはっきりしないときはCTを行うこともあります)。エコーだと手軽に検査が行え、診断も比較的容易です。
しかしこの容易というのはエコーに熟達していたらという制限つきです。全国の小児外科医ならほとんど問題なくできますが、誰でもできるというわけではないんですよ^^小児科の先生方は一般的に難しいかもしれません。
そして治療方法は虫垂切除術です。おなかを切って虫垂をとるんでしょ??? そう、そのとおりです。
ただし、ただおなかをばっさり切ってとるのなら昔から進歩はありません。今は腹腔鏡の時代です。へそに1つ、ほかに数個の小さな傷をつけ、そこからカメラなり道具を入れて虫垂を切り取る手術です。この方法だと傷はほとんど目立たず、大きくおなかを切る昔の方法に比べて回復も早いといわれています。慣れてしまうと従来の方法より少し時間がかかるくらいで手術を完遂できます。最新の話をすると、臍からの傷だけで手術する方法もあるんですよ。ただそれだと臍の傷が大きくなってしまい、体の小さいお子さんの場合は不向きだと考えており、私達はしていません。
その代わり、ではないんですが私達の施設では小児専用の腹腔鏡を導入する予定としています。カメラや道具も小さくして傷自体も小さくできるので、傷跡もより目立たなくなるというわけです。成人外科の手術で使う道具より小さいものを今でも使っていますが、さらに小さくしようと努力しています。
当院では小児外科医がいますので、15歳以下のお子さんが小児外科医により治療してもらえるメリットを最大限享受してもらえるようにするべきだと考えています。小児外科のない病院で大人の先生方に手術してもらうより、やはり専門の病院で手術してもらった方が良いなと思ってもらえるように鋭意努力しているところです。
せっかくなのでオチも含めて最後に一つ。
直接見たことはありませんが、虫垂炎の患者さんの虫垂をカメラを使って手術しますが、その道具を口から突っ込んで手術する方法があるんですよ。世界で初めてインドで行われたらしいんですが・・・興味深い話です。口から虫垂がでてくるんですよ。まだ私達地方の医者の手で行うようになるとは思えませんね。しかしあらゆる手段を考えて手術を行うことが将来何らかの治療のヒントにつながる可能性もありますので、決して悪い話ではありませんし、今でもこの類の手術は研究が重ねられていて、いつかありふれた治療になるかも??? しれませんね。
以上、片山でした。
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