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2020年6月20日
脈管奇形とVascular Anomalies Center
子どもの皮膚に赤い血管腫という病変ができたり、皮膚の下、おなかの中の臓器にも増殖した血管内皮細胞の塊や異常な血管、リンパ管の集まりが出来ることがあります。血管腫、血管奇形、リンパ管奇形と呼ばれる疾患です。それらは混在することもあります。血管奇形やリンパ管奇形は自然になくなる病変ではないのですが、血管腫、特に乳児血管腫は出生後の数週間以内に出現し、1歳頃まで増大し、その後、数年間で自然に小さくなっていきます。複雑な病変の場合は、診断にはきちんとした病気に対する知識が必要ですし、治療は複数科で相談し、薬物療法、硬化療法手術などの中から適切な方法を選択することが重要です。
当科では複雑な疾患の場合はBoston小児病院のVascular Anomalies Centerのカンファレンスに相談することがあります。今までに3人の患児の診断、方針について大変参考になる意見を頂いており、治療方針の決定に役立てることが出来ています。このカンファレンスには世界各国から症例の提示があり、Boston小児病院の小児外科、形成外科、放射線科、病理検査科など複数科の医師が集まって毎週議論が行われております。私が2007年に2ヶ月間滞在していた間、もちろん聞いているだけですが毎週カンファレンスに参加させてもらい大変勉強になりました。小児外科からはFishman先生、その当時はご存命であったFolkman先生が、形成外科からは Mulliken先生などが参加されておりました。Mulliken先生は脈管奇形の国際的な分類であるISSVA分類の礎1)を築かれた方で、常に議論の中心で意見を述べられておりました。このISSVA分類は2年に1回行われるISSVA Workshopで新たな知見が加えられて発展していくため、我々も注意してその知識を更新していく必要があると考えています。
ちなみにBoston小児病院は小児外科医にとっては小児外科の歴史を知る上で大変重要な病院です。チーフは初代Ladd先生、Gross先生、Folkman先生、Ziegler先生、Hendren先生そしてShamberger先生へ引き継がれています。また、そこでFellowとして学ばれたそうそうたる小児外科の先生方の名前が医局の壁に飾られています。
機会があれば是非もう一度数ヶ月でも訪れたい病院です。
1)Mulliken JB, Glowacki J: Hemangiomas and vascular malformations in infants and children: A classification based on endothelial characteristics. Plas Reconstr Surg 69: 412-420, 1982
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